おすすめ写真集のお知らせです。
写真家・藤代冥砂さんの初の風景写真集が赤々舎から発売しました。
藤代さんが5年の歳月のなかで撮りためた、
沖縄の美しい空や海の写真が104ページにわたり収められています。
ぜひご覧ください。
<赤々舎からの内容紹介>
空と海のあいだ。海と森のあいだ。
あおあおと満ち、うごき、連なるいのち。
沖縄に移住して5年の月日のうちにいつしか撮りたまった写真は、
暮らしのなかで眼差しを向けた南国の光と色に溢れています。
神秘的な海の中の景色、そこここにある拝みの場所、
循環する水の動き、鮮やかな動植物たち。被写体と真っすぐに向き合い、
その生命力を交歓するようにして撮られた一枚一枚から、
突き抜けた明るさとともに、世界に寄せる静かな祈りが伝わってきます。
光と色と祈りに満ちて
5年分の写真を振り返ると、気になる写真には光と色とがあった。
それは結構な量だったので、一冊にまとめてみたいと思った。
赤々舎の姫野さんに持っていくと、写真が上手ですね、と褒められた。写真が上手と言われたことはほとんど無かったので、そうか、写真うまいのか、と嬉しく思った。それは去年の冬の始まりの頃だった。
その後、たくさんの沖縄写真を持っていった。600枚くらいだったと思う。何度も会って、感想を交換した。写真の種類はもう少しだけ幅があったのだけど、自然に光と色でまとめる方向へと定まっていった。それらに私の正対する視線がより強く残っていたからだ。その間、私は自分の撮った写真と現実の沖縄での暮らしを、何度も何度も往復して、矛盾は無いか、嘘は無いか、をしっかりと確認した。大丈夫だった。
私は、光と色に添うようにして沖縄で5年を暮らした。島の歴史や現在の問題はそこに居れば、目に見え、耳に聞こえ、肌で感じられる。それを写そうと思わなかったのは、光と色に託してみたかったからだろう。それは無意識の選択でもあったが、強度があった。自分の持ち場はそこにあるのだと直感したのだと思う。
島の自然や暮らしの断片を通して輝く光と色の原初の美しさは、言葉にするならば、あおあお、であり、意味にするなら、祈り、に近いと感じた。私はあおあおとした世界で島の幸福を祈っている。
構成としては、海から始まり海で終わっている。水の循環である。終わりの一枚では、父が子供に何かを唱えている儀式のようにも見える。光が沈む頃の崇高さは、時代と場所を問わないだろう。そして朝が来れば、はじめのページへと戻る。光と色と祈りに満ちた一日がまた始まるのだ。
藤代冥砂
『あおあお』藤代冥砂
定価:2,600円(税抜)
仕様:B5変型(188×257mm)/104ページ/ソフトカバー
アートディレクション:塚原敬史(trimdesign)
◯ 藤代冥砂
1967年 千葉県生まれ。明治大学商学部卒。
主な写真集として『ライドライドライド』(スイッチパブリッシング)、『58HIPS』(祥伝社)、
『もう家に帰ろう』(ロッキングオン)、『肉』(集英社)、『SKETCHES OF TOKYO』(青幻舎)がある。
『ドライブ』(宝島社)、『誰も死なない恋愛小説』(幻冬舎)などの著作により小説家としても知られ、
他の著作として、トラベルフォトエッセイ『父と息子、ヒマラヤを旅する』(ibooks 幻冬舎)、
エッセイ集に『合格女子』(講談社)がある。